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vol.1


知床毛ガニ漁師

泉航平
斜里町ウトロ漁港

知床半島の東に位置する斜里町ウトロ。
オホーツク海に面したウトロ漁港は、
日本一鮭が水揚げされることで有名です。
また、この漁港のもうひとつの名物は毛ガニ。
流氷の下で育った毛ガニは絶品で、
これを目当てに国内外から
たくさんの観光客が訪れます。

vol.1はウトロ漁港で親子2代、
毛ガニ漁を行なっている泉航平による
”俺の町から”

夜中の2時から10時までひたすら作業。
夜明け前から始まる毛ガニ漁


毛ガニ漁は3月下旬の海明けとともに始まり、7月末まで行います。解禁期間が決められているので、ほぼ毎日漁に出ていますね。朝が早く、夜中の2時に出航して10時間ほど作業します。
11時ごろ港に戻るとすぐに、生きたまま水揚げした毛ガニを茹で上げます。少しでも鮮度の良い毛ガニをみなさんにお届けすべく、スタッフ総出で作業しています。

▲真夜中に出航し、約10時間の漁業の後は浜で流通のための作業。毎日が体力勝負です。

みなさんの“おいしい”の声が
あるから頑張れる


私は漁から加工、卸しを一貫して行っており、主に知床の宿泊施設や飲食店に出荷しています。昨年、私どもの毛ガニを夕食のメインで出している民宿が旅行情報サイトの民宿夕飯部門で1位を獲得しました。毛ガニと地元を評価して頂けて、とても誇らしかったです。
自慢の毛ガニを全国のみなさんに直接届けたくて、ネット販売も始めました。ご購入されたお客様から「今まで食べた毛ガニの中で1番おいしかった」と言って頂けるのが何よりもうれしいですね。辛いことも多いですが、毛ガニ漁師をやっていて本当に良かったなと思います。

▲獲れたてを茹で上げることで鮮度に差が出ます。本当に美味しい毛ガニを届けるため、労力は惜しみません。

ウトロ漁港の毛ガニの
おいしさの秘密は“海”


オホーツク海は毛ガニの生育に最良な環境です。太平洋や大西洋は常に船が往来したり、漁を行ったりと海が休まる暇がありません。一方、オホーツク海は1月から3月まで流氷が来るため、海が休息できます。流氷とともにプランクトンも運ばれるので、魚たちにとって穏やかで栄養豊富な海になります。
オホーツク海は日本周辺の海の中で一番水温が低く、潮の流れも早い。そのため、ウトロ漁港で獲れる毛ガニは味が濃厚で、身が引き締まっているんですよ。毛ガニは北海道全域で獲れますが、私はウトロが1番おいしいと自負しています。

▲この海で育ったからこそ美味い毛ガニを、沢山の方に味わっていただきたいです。

毛ガニのおいしい食べ方

―― これぞ本場の漁師飯!

甲羅を外して抱き身(胴体部分)とカニ味噌を混ぜ、そこに出汁入りの味噌と日本酒を入れてグリルで焼いて食べるのがおすすめです。
軽く炙るとカニ味噌が濃厚になり、抱き身の甘みも増します。カニ味噌が苦手な方にも「これならおいしく食べられる」と好評です。

ベテランの漁師たちは、ただ毛ガニを半分に割ってお湯の中に入れて味噌を溶かして食べるのが1番おいしいと言っています。贅沢すぎる食べ方ですよね(笑)
初水揚げの時に船の上でそれを食べるのが毎年の恒例で。お湯にただカニと味噌を入れるだけですが、カニから出汁がたっぷり出て絶品なんです。

▲こんな食べ方も、素材の味がいいからこそ。恒例のカニ汁が始まる漁期の活力になります。

―― 殻まで食べられる泉さんの毛ガニ

水揚げし、茹でた後周りの砂を落とすために毛ガニを水につけるのが一般的ですが、うちでは水につける作業は一切していません。水につけてしまうと、どうしても毛ガニの味も抜けてしまうので。
その代わり、私たちは茹で上がった毛ガニを1尾ずつ丁寧に洗っています。そのため、うちのカニは殻まで食べられますよ。購入した頂いたお客様にも「食べ残った殻をお味噌汁に入れて食べてください」とご紹介しています。出汁や旨みがたくさん出るので、ぜひ殻まで堪能して頂きたいです。