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vol.3


網走ホタテ漁師

山本正樹
網走市能取湖

北海道網走市にある能取湖。
オホーツク海とつながる大きな海水湖で、
ホタテ養殖が盛んに行われています。
山に囲まれた能取湖はミネラルが多く、
流れ着く流氷が運んできた
豊富な植物プランクトンにも恵まれ、
甘みの強いホタテが育ちます。

Vol.3は能取湖で
ホタテの養殖業に勤しむ山本正樹による
”俺の町から”

4年もかけてじっくり育てる
能取湖のホタテ


僕たちはホタテを稚貝から育てています。4月はホタテの産卵時期で、宗谷暖流にのって浮遊幼生(ホタテの赤ちゃん)がオホーツク海へと流れてくるんです。海に採苗器というネットを仕掛けて浮遊幼生を付着させ、夏頃まで置いておきます。
8〜10mmほどの大きさになったら、他の稚貝と選別して養殖カゴに入れて越冬し、春に漁場へ放流します。それからは天然ものと同じ環境で成長させて、3年後の産卵期明けに漁獲しています。

▲ホタテは育てた稚貝の数だけ水揚げされます。4年後の漁獲を見据えた丁寧な管理が安定したホタテ漁をつくります。

原因不明の大損害
自然を相手にする難しさ


能取湖は面積が小さく、決められた漁期は6〜7月末の2ヶ月間のみ。1日1隻あたり約7t、2ヶ月間で1000t近くの能取湖産ホタテが水揚げされます。
僕たちはよその漁場にホタテ稚貝の販売もしているのですが、実は今年の春に能取湖の稚貝だけが全滅してしまって……。幸い、他の養殖場から余剰分を分けてもらえて乗り切りましたが、約1億8千万粒の稚貝が失われ、7億円にも上る甚大な被害に。ニュースにもなる大変な事態でした。全滅した原因は未だに分からず、今後の対策も取れないため不安は続いています。

▲春先は網の清掃のために出港します。漁期に向けた下準備もホタテ漁の大切な作業です。

山の恵みと海の恵みで育まれて
濃厚な甘みに


ホタテの養殖はロープで育てる垂下式を採用している漁場が多いですが、能取湖では地まき放流して育てています。垂下式は養殖期間が2年なのに対し、地まき放流は4年も育てるので身が大ぶり。運動量も多く、筋肉である貝柱が大きくなります。 さらに、能取湖産のホタテはグリコゲンが多く含まれており、甘みが強いんです。飲食店の方も「能取湖のホタテは甘みが強いから、バーナーで炙ると表面がカリカリになる」とおっしゃっていました。
能取湖は周囲の山から流れてくるミネラルと、流氷が運んできた植物プランクトンが豊富な漁場です。だからこそ、オホーツク海よりも大きくて甘いホタテが獲れます。

▲同じ”北海道産ホタテ”でも、能取湖産ならではの味わいがあります。ぜひお召し上がりください。

毛ガニのおいしい食べ方

―― 高鮮度だからできる味!

簡単に美味しく食べるなら、やっぱりお刺身です。冷蔵庫で冷やすと貝柱の繊維がまとまって、しっとりとした食感が楽しめます。
僕たちは獲れたてを船上で剥いて食べるのですが、新鮮なホタテの貝柱はサクサクとした食感なんです。水揚げ直後でしか食べられない絶品のお刺身ですよ。

ホタテは加熱すると甘みが一層引き立ちます。僕が1番好きなのはホタテフライ。ホタテの旨みがジュワッと広がります。魚焼きグリルで焼くのもおすすめです。醤油やバター、マヨネーズなどお好みの調味料で味付けしていただけたらなと思います。
ホタテは火の入り加減で食感も味も変化します。ぜひ色々な料理で味わってみてください。

▲旨みの強い能取湖産は、どんな料理にも美味しさを発揮する最高のホタテです!

―― 知る人ぞ知る、希少な能取湖産のホタテ

能取湖のホタテは数量が少なく漁期も短いため、すべてオホーツク海産として出回ってしまいます。地元では能取湖のホタテはおいしいと評判なものの、全国的にはあまり知られていません。
けれども、僕たちはオホーツクで獲れる海産物の中でも1番だと自負しています。ぜひ、みなさんに能取湖産のホタテを食べいただけたら嬉しいです。